「だい…丈夫?」
「あぁ」
そう言ったけど、手にしてた本が気になって動けない。
“肝臓”と記載された本を見てしまうと、翔の身体の事がとてつもなく気になった。
「ご、めん…」
「何で謝んの?」
「分んない…」
そんな事、分んない。
理由がいっぱいすぎて、そんな理由すら分んない。
「何それ…」
「翔、あのね。あ、あたし――…」
「何回もゴメンねぇー。翔、飲み物とか買って来たんだけどー…って、あれ?」
あたしの言いかけた言葉が明るい声で遮られる。
そしてその誰かが言いかけた言葉はあたしを見た瞬間にピタっと言葉を止めた。
“翔、あのね。あ、あたし…またここに来てもいい?”
無理だと分っていながらも、そう言おうとした言葉。
それも、もう言うのすら無駄だと思った。
困惑気味であたし達を見るのは、さっきエレベーターの前で出くわした女の一人。
話からすると、翔の元カノであろう女のほう。
「あ、ごめんなさい」
女の人は軽く頭を下げて持っていたビニール袋をテーブルに置くと、遠慮気味に背を向けた瞬間、あたしは口を開いてた。