どうしてだろう。

どうしてこんな時に涙腺が緩んでいくのかが分からない。


今、泣いたってなんもないのに。

今、泣いたってなんも得る事はないのに。


だから思わず潤んだ瞳を閉じて深呼吸してしまった。


「…そう…だよね」


出た言葉がこれ。

これじゃあ翔の言った事に、認めてるって言ったようなもんだ。


「…俺の事は気にすんなよ」

「でもっ、身体…」

「だから美咲が気にする事ねぇじゃん。気にしても何もねぇだろ」

「だけど、あたしが原因だったらって…」

「美咲が原因?」


翔の声のトーンが更に少し落ちる。


「あたしの所為で入院してんだった――…」

「何でお前の所為で入院しなきゃいけねぇの?これは俺の所為でしてんの」


あたしの声を遮った翔は少し面倒くさそうにため息を吐き捨てた。


そんな翔に触れたいと思った。

自分勝手で、どうしようもないあたしだけど、



翔に、



触れたいと、そう思った。