「なんか俺に用か?」


そう言った翔に視線を送れないのはどうしてだろう。

それはきっと顔を見れないから。


勝手に距離を置いて別れたのはあたし。

そんな勝手な事をしたのにも係わらず、こうやって目の前に現われてるあたしを翔はどう言う風に捕らえてるのか、その表情を見るのが怖かっただけ。


「…病気って…」


ポツンとあたしの口から零れ落ちた声。



「え?」

「何で入院してんのかなって…」

「それって言わなきゃいけねぇの?」

「え?」


思わず顔を上げてしまった。

ほんの、ほんの一瞬の出来事だった。


咄嗟に上げてしまった翔の瞳は既にあたしを避けていた。


…当たり前、だよね。


「それを美咲に言ってどうにかなんの?」

「どうにかって…」

「正直、来られっと迷惑」

「……」

「俺、時間かかんだわ。お前、忘れるのに…」

「……」

「なのに、こうやって来られると忘れるもんも忘れられねぇ…」

「……」

「俺、言わなかったっけ?若い時みたいにガツガツいけねぇって。若い時ならお前を引っ張ってる力あったけど、もう歳だし、離れていったお前を追っかけていく自信ねぇの」

「……」

「だから正直、迷惑」


少しづつ瞳が潤んでいくのが分かった。