暫くの間、その場で佇んでしまった。

足が思う様に動かず、ただひたすら立ち止まってた。


そして考えた結果。


「…帰ろう」


そう小さく呟いた瞬間、


「あー…、アンタ。…えっと、美咲…ちゃん?だっけ…」


不意に聞こえた声に視線を向けた。


「…あっ、」


聞こえるか聞こえないくらいかの小さな声を呟いたあたしは目の前に居る…

確か、諒ちゃんの幼馴染って言ってた。


…リュウセイ…さん?


「美咲ちゃんだよな?」

「え、…あ、はい」

「覚えてる?俺の事」


ズボンに入れていた右手を出すとリュウセイさんは自分に指差す。


「えっと諒ちゃんの幼馴染の…」

「あー…そうそう。諒也元気にしてんの?」

「さぁ…会ってないんで」

「そっか、まぁアイツの事だから元気だろうけど。つか、翔に会いに来たの?」


…翔に、会いに?

分んない、そんなの。


だから、


「あ、いや…」


曖昧な言葉を呟いてしまった事に後悔した。