気づけば冬休みに突入していた。
あの日からの一条くんは一度も学校に姿を現す事なく休みに入り、結局は今どうなってんのかも分らない。
天野さんは1週間程、あたしの家に居たけれど、最終的には自分の家を選んで帰って行った。
いつでも来ていいから。と言ったあたしに笑顔で“有り難うございます”と言って。
後、もう少しで…
もう少しで今年も終わりなんだ。って、そう思ってた矢先の事だった。
冬休みに入っても学校のやる事は沢山あって、裏腹な気分のまま過ごす毎日の日々の帰り道。
また見たくもない顔をみてしまった。
「…こんばんわ」
そう言って誇らしげに言ってくるのは、あの女。
何が“こんばんわ”なの?って言いたくなる様な言葉。
「何ですか?」
素っ気なくそう返すあたしに女はクッと口角を上げた。
「ちょっと忠告しに来たの」
「…忠告?」
「そう、忠告ね。この前さ、楓が来たんだけど、それってアンタが言ったからでしょ?」
「その話しなら聞かないから」
そう言って、背を向けて歩き出すあたしの肩をグッと掴み、その所為で身体が傾き思わず顔を顰めた。
「まだ、終わってないから」
あたしと変わらない身長の女からは香水が漂って、自棄に鼻を突き刺す。
睨むあたしに女はため息を吐き捨てて、あたしの肩から手を離した。