「何?」


進めていた足を止めた諒ちゃんは振り返って、身体ごとあたしに向ける。


「あのさ、葵にゴメンって言っといて」

「は?つかお前、また喧嘩でもしたのかよ」

「“また”じゃないし、喧嘩でもない」

「だったら自分で言え。俺を使ってんじゃねぇよ!な、センセ?」


嫌味ったらしくほほ笑んだ諒ちゃんは止めていた足を再び動かし、もう一度手をヒラヒラさせる。


そんな諒ちゃんに思わず眉間に皺が寄ったけれど、諒ちゃんが言った事に正しいって、今更ながらに思ってしまった。



もう一条くんの事なんてどうでもいい。どうでもいいって訳じゃないけど、葵と話してた会話の内容が頭の中を駆け巡っているから。

素直になれないんじゃなくて、行動に起こせないだけ。


どうしたらいいのか分かんないだけ。


これが正しいって言う選択がイマイチ分んない。

これがいいって思ってても結局は曖昧な気持ちで矛盾してくる。



だけど、あたしが生きていて今のあたしが居るのは、



…―――翔のお陰なんだ。



それだけは分るの。