「ちょっと、一条くんっ!!」


思わず人混みを掻きわけて叫んだあたしの声。

その声に周りの人達の視線はあたしに降り注ぐ。


「ねぇ、やめなよ!!一条くんっ!!」


そんなの関係なしにもう一度叫ぶあたしの声に一条くんは険しい表情のままあたしに視線を送った。

そのあたしの腕を諒ちゃんは肘で突く。


「つか、お前あの中に入る気?」

「入んないけど――…って、ちょっと諒ちゃん!!」


話す途中で諒ちゃんは足を進め争っている数人の中へと向かっていく。


ちょ、ちょっとマジ何なの!?


あたふたしながら諒ちゃんを追っていると、その数人の前で足を止め、


「つかさ、場所考えてくんね?ここすんげぇ迷惑なんだけど」


そう吐きだした諒ちゃんは一条くんに向かってではなくて、相手の方。

諒ちゃんがよくそんな事を言えたもんだ。あれほど散々迷惑な場所でやってきといて。…と思ったけれど、諒ちゃんは手を出す事はなく至って普通だった。


だけど、相手の表情が一気に変わり、


「は?誰、お前」


そう諒ちゃんに吐き捨てた男に一瞬ヒヤッとした。


どうみても諒ちゃんより年下。

そんな口調を諒ちゃんに向かって吐き捨てたら殺されるよ。と、一瞬でも思ったあたしは、諒ちゃんが一変しないうちにあたしが口を開いてた。