訳の分からないまま携帯を受け取り耳に当てる。
「はい」
「お前、何で電話でねぇの?」
そう言った諒ちゃんの声は呆れてる感じ。
「ゴメン、気付いてない」
「はぁ!?何回も掛けてんのに」
「そうなんだ。…で、何?」
「あー…あのな、今、繁華街の手前にいんだけどよ、男数人が暴れてんだよ」
「だから?あたしに関係ないじゃん」
「つか、聞けよ!でな、どうも定時の奴らしいけど。ここら辺の定時って、美咲が行ってる所しかねぇんじゃねーの?」
「そうだけど、でもそんなのどうでもいいよ。定時っつったって結構人数いるんだから知らないよ。ほっとけば?」
…もう、そんなのどうでもいい。
誰が喧嘩してようがあたしには関係ないよ。
「いや、それがな。…お前さ、金髪に近い髪の若い男知ってる?」
「…金髪?」
「そー、そいつだけど何かすげぇ派手に暴れてんだけど。…で、会話が飛んで来たんだけどよ、里桜香って言ってたぞ?もしかしてあの子じゃねーの?」
「……」
「警察に行った時、警官がそう言ってなかったか?」
「……」
「おい、美咲聞いてんのか?」
「聞いてる。多分、里桜香ってのは天野さんの事。諒ちゃん、繁華街って言ったよね?」
「おう。その手前」
「今から行くから」
それだけ伝えたあたしは携帯を切り、不思議そうに見つめる葵に渡した。