「…美咲?」


不意に聞こえた声に合わせていた手を離し、ゆっくりと振り返った。


「あ、…葵」


そこに立ち尽くして居る葵は花を抱え、あたしとの距離を縮める。


「来てたんだね」

「うん」

「あたしもいい?」

「うん。ありがとう」


葵は持っていた花を供え墓石をジッと見つめた。


「まだ、なんか実感湧かないね」

「そうだね。…葵、昨日も来た?それとも今日、諒ちゃんが来たの?」

「え?何で?」

「あたしが来る前に供えてあったの。まだ綺麗でさ、もしかしたらと思って…」

「いや、あたしも諒也も来てないよ。…多分それ芹沢さんだと思う」

「…翔?」

「あたしさ、時間があったらこうやって美咲のママに会いに来てたの。それで数回芹沢さんと出会う事があってさ。だから芹沢さんだと思う」

「そう…なんだ」


全然知らなかった。

翔がここまで足を運んでくれてたなんて知らなかった。


「美咲、芹沢さんと話したの?」

「話してないよ」

「何でっ!!」


勢いよく発せられた声とともに葵に肩をグッと掴まれ、その拍子に葵と顔を合わせる。

見るからに葵の表情は良くない顔をしてて眉間に皺を寄せてた。