悴んでしまった手を擦りながら家の中へと入る。

リビングに置いてあった携帯を掴んで、もう一度あたしは廊下に出て携帯を耳に押しあてた。


「何?…美咲ちゃん」


すぐにコールが切れたかと思うと一条くんの声が耳に届く。


「天野さん居た」

「あいつ帰ってきたの?」

「…って言うか、繁華街に居たみたい。たまたま見つけてもらって家に連れて来てもらった」

「そっか。なら良かったけど」

「帰りたくないって言ってたみたいだけど、天野さんのお母さんに言うべきだよね?」


自分で決断できない所為で、つい一条くんに答えを求めてしまった。


「あー…つかあんま係わんねぇほうがいいよ?」

「係わんないほうがいいって、どー言う事?あたし、一応先生だし…。ここに居るって…」

「言ったからって何も変わんねぇよ。それに里桜香が嫌がるから美咲ちゃんは何もしなくていいって」

「そう…なのかな?」

「そうそう。とりあえず里桜香、宜しくね」

「うん。…って言うか、一条くんは何してるの?学校…」

「つか、学校の事は何も聞かねぇって言わなかった?」

「で、でもっ、」

「んじゃあ、またね」


プツンと一歩的に切れた電話。

その所為で思わず出てしまった大きなため息が自棄に耳に張り付く。


仕方なく携帯を閉じリビングのソファーで膝を抱えて横たわる天野さんの隣であたしは腰を下ろしソファーに背をつけた。