その声に反応した翔は車に乗ろうとする動きを止め、あたしに視線を送る。


「あの、…ごめん。ありがとう」

「ううん」

「あの、あたし…」

「入れよ。風邪引くぞ。…じゃあな」


ほんの少しだけ微笑んだ翔は車に乗り込みドアを閉めようとした瞬間、あたしは思わず駆け寄ってそのドアを手で阻止した。


「待って。…翔」

「どした?」

「……」


座席に座っている翔はあたしを見上げる。

だけど、その翔の瞳と視線を合わせることなくあたしは視線を下に落とした。


…繁華街で何してたの?


その言葉がどうしても口から出てこなくて。


…もう一度ホストやるってホント?


その言葉も口が開いても声を出す事は出来なかった。


「…美咲?」


不意に呟かれた翔の声。

今までずっと、そうやって呼んでくれてた翔の声。


あたしから距離を置くって言ったのに、そんな事きくのはただの都合のいい女なんだろうか。


「…ごめん。何でもない」


出た言葉はほんとにどうでもいいような言葉。

あたしから引き止めたと言うのに、何もないってありえない言葉。


だけど、顔を見ると、その声を聞くとやっぱ、



好きだよ。