翔が来るまで変な胸騒ぎが治まることはなかった。
天野さんは何故、繁華街に居たのか。
そして翔は繁華街で何してたのか、…とか思う事はいっぱいあって変な気持ちでいっぱいだった。
どれくらい時間が経ったのかも分らない時だった。
インターホンがなり向かわないと行けない足が何だか重く感じ、玄関のドアの前で一瞬、佇んでしまった。
そのドアの前で一息吐き、あたしはドアを開ける。
先に目に飛び込んできたのは俯いた天野さんの姿。その天野さんの姿を見た瞬間、あたしは無意識の内に天野さんを抱きしめていた。
「…何してんの?心配したんだから」
泣いてる所為か、寒さで震えてる所為か分かんないけど、あたしはギュっと天野さんの身体を抱きしめ耳元でそう呟く。
だけど天野さんは何も言葉を発する事なく、ただただあたしの身体に身を寄せてた。
そして意識がハッとして目に飛び込む翔の姿。
私服で身を包んだ翔は少し口角を上げて微笑んだ後、あたしに背を向けた。
「天野さん、入ってて」
慌てて天野さんの身体を離したあたしは、ドアを開けて天野さんを家に入れる。
そして今にも車に乗り込もうとする翔に、
「待って!」
声を張り上げた。