「…ごめんね」

「美咲は…美咲は辛くないの?」

「辛いに決まってんじゃん。泣いた。すごく泣いた。多分今までに一番泣いた。でも仕方ないんだって、受け止めて…その努力をしてる最中」


そう言って悲しく笑った。

なのに葵の瞳からは一滴の涙が頬を伝った。


「…って、何で葵が泣いてんのか意味不明」


続けてそう言ったあたしは葵の顔を覗き込む。

その潤んだ瞳と目が合った時、あたしはニコッと微笑んだ。


「だって…」

「でー…今は教師と言う役目を果たそうと頑張ってんの。留学してて帰ってきて教える事に今は嬉しくて、一番の幸せ」


そう微笑んだけど、実際はそうじゃなかった。

これ以上、葵の前で弱音を吐く事なんて出来なかった。


昔っから心配性の葵。

やっぱ、変わってないのはあたしも同じだ。


しんみりとした話は嫌いで、喫茶店を出た後、久し振りに葵と二人で店を探索した。

あたしの学校での話しとか、葵の家庭の話とか、あそこの店に今度いこうとか…ほんと些細な他愛もない会話。


そんな些細な会話が凄く新鮮であたしは嬉しかった。

心は切なくても、こうやって葵と笑って話せる事があたしは嬉しかった。