「何かあった?」
すすり泣くあたしの頭を翔は優しくずっと撫でる。
今まで一滴も出なかった涙が翔の顔を見た途端に溢れ、どうしようもなかった。
「…いないって…」
暫く経ってからそう言った言葉に翔の撫でていた手がピタっと止まる。
「いないって?」
「…赤ちゃんいないって」
「…え?」
「流産してた」
原因なんて何なのか全然分かんない。
ただ普通に生活して、普通にしてただけなのに、こんな結果になる原因なんて全く分かんない。
何で?何で?頭の中を駆け巡る言葉はそればかりで、上手く息が出来そうにない。
こんなに涙を流したのも初めてで、こんなに泣いてる姿を翔に見せたのも初めてだった。
自分を責めて自分が嫌いで…
そんな事を思ってる自分がもっと嫌だった。
「…美咲?」
「……」
そっとあたしの手に触れた翔の手が自棄に温かかった。
自分でも冷たく感じてた手が一気に翔の温もり変わってた。
「正直…俺もすげぇショックだけど、俺は美咲が居てくれたらそれでいい」
「……」
「次もあんじゃん。けど今は美咲の身体の方が優選。…辛い思いさせてゴメン」
そう言った翔の手があたしの涙を拭った。