「あ、そうだ。ママに報告」
衣類をロッカーに詰め込んだあたしはパイプ椅子に座ってママに微笑む。
そんなあたしに対してママは薄ら笑った。
「…何?」
「うーん…どうしよっか」
そう言ってあたしはママを焦(じ)らす。
「なぁーに?」
「あたしさ…、あたし妊娠してるみたいなの」
「それ、ホントなの?」
「ホントみたい。あー…でも病院行ったらさ、まだ周期が早くて分かんないんだって。来週にはちゃんと赤ちゃんの存在が分かるから行って来る」
「そう。良かったね」
そう言ったママの顔が今までで一番の最高の笑みだった。
「あー…でもごめんね。結婚する前に出来ちゃった」
苦笑いするあたしにママは首を何度か振り、あたしの手を軽く握る。
「おめでとう。…ママも長生きしなくちゃね」
「うん。…そうだね」
笑みを漏らすママにあたしも微かに笑う。
ママは自分の今の状況を知ってると思う。
あたしからは何も言ってなくても、きっとママは今の症状が分かってると思う。
なのにそうやって笑うママの顔が切なかった。