【どうなさったのでしょうか?】

「うーん…とりあえず言えることは、それを僕に言われても、かな」

【ですよね】


見ず知らずの人間のことを、高橋さんが知っているはずないですよね。

ちょっとだけしょんぼりする。

【そういえば、被害者の方は金子さんというのですか?】

「は!?」

大きな声に、周囲の視線が集まった。
高橋は口に手を当てて身を僅かに寄せる。


「な、何でそう思ったの?」

高橋の口調は優しいままだが、焦りの色が見える。
当たり、ですか。


【私を連れてきてくれた人が言ったんです。あれはきっと金子くんなんだろうって】

「………」

高橋の眉が、ぐっと寄る。
きっとその頭の中でめまぐるしく思考が働いているのだろう。

散々唸ったあと、探しながら言葉を出した。

「犯人って訳じゃなさそうだけど、凄く怪しいね」

【そうですよね】

「ちょっと調べてみる。人相とか教えてくれる?」

【はい。身長が――】


数分の出会いを、出来るだけ細かく言乃は高橋に伝えた。