* * *


いてもたってもいられなくなった言乃は、単身何か事件が起きたという駅前にやってきていた。


「ねぇねぇ、あっちだって!」

言乃と同じくして、携帯のカメラ機能を準備するカップル。

「ちぇ、何も見えなかった…」

不満そうにぶつぶついいながら仕事に帰るサラリーマン。


まだ早い時間だというのに、皆様……

感心するというか、なんというか。

黄色いテープの前にたむろする人々を見ての正直な感想。
あとはあの人混みに入るだけでいい。

しかし、言乃には不安が一つ。それゆえ、人混みをじっと見つめ、一歩後ろでポツン。

どうしましょうか。
無言で人様を退ければ嫌な思いをするでしょうし、かといってここで携帯を出しても通じないでしょうね……。

困ったものです。


じぃっと見つめてみても念力が使える訳でもなし。
ため息をついて、振り向きかけたとき――


「キミはいかないの?」


念力、通じました。