オレは部屋でも、母さんが早めに入院したって、毎日通った。

『ありがとうね』

『何言ってんだよ。当たり前だろ、こいつが産まれたら散々兄者って呼ばせてやるんだから』

『それは…まったく、みんなから変な影響しか受けてないんだから』

『かっこいいだろ!』

『馬鹿なんだから』


始めはよく笑ってくれた。
でもお腹が大きくなる頃には青白くやつれていっているように見えた。



『母さん! 産むのなんか二回目だろ。大丈夫だって』

『…そうね』


決して大丈夫とは言い難かった。
他にかける言葉なんて、幼いオレには見当たらなくて、大丈夫だと繰り返していた。

オレだけは、おかしくなったらいけない。
“大丈夫”はまるで自分にも言い聞かせていたようで。


親父は多忙を極め、家でも会える機会は少なかった。