白く、丸い。
それにまとわりつく黒と黄色の明るい、固い質の糸屑。

そして――それらを纏めていたであろう、カチューシャ。


吐きそうになり、でも掘り出したものを手で取り出す。

吐くのを我慢しているからか、初めてそれを間近で見たからか、様々なものが複雑に合わさり、涙と鼻水になって炯斗の顔をぐしゃぐしゃ。
それでも取り出したものを離そうとはしなかった。


髪型しか判断材料はないが、間違えようはない。
そんな人間、一人しか炯斗は知らない。


「ふ、ファントム……あんた、なのかよ…」


顔の部分だけだが、顎を引いてうつむくように彼は白い体で眠っていた。

丁寧に丁寧に、その頭を持ち上げる。
目線が合った瞬間、炯斗の頭にきつい衝撃が走った。


“…天城、てめえ!!”
“簡単に引っ掛かってくれてありがとうよ。そして、サヨナラだ。二度と会うこたぁねぇな!”
“パァンッ……!”

衝撃は来た時と同様に唐突に去る。
残ったのは、名残の焼ける痛みと真っ白になった脳内。

「!? …今のは…?」

『お前……!?』


振り向くと、目を見開いて炯斗に迫るのは真っ青になったファントムだった。