わからない。
だから言乃はそのまま話を続ける。


「霊となって帰ってくる方々には多くの場合において何か強い思念があります」

『思念…』

「それは人それぞれです。私にはわかりません」

『……』

「でも、無理に聞こうと思えば聞くこともできます」


ファントムの瞳が、僅かに上がる。

「私が授かった能力は、そういうものです」


言ノ葉-コトノハ-は言乃が口にした言葉を、霊に強制させる能力だ。
本人が自覚していないことも、或いは聞き出すことが出来るかもしれない。

ファントムは目を開いて、言乃を凝視している。

「でも私は、それをあなたに使いたくありません」


まんまと驚いた顔をしているファントムを横目に言乃は小さくニヤリと笑う。


そんなに驚くことでもないんですよ?
そう思わせてくれたのは、あなたなんですから。


「私が質問したってファントムさんは何も答えてくれませんでした。
私には出来る手段があったのに、それも使わずに。
…そのうちに気がついたんです。人に何かを強いることは、よくないって」

『ぷはー、単純な考えだな』


言乃は柔らかく微笑む。


「はい。でも、道理じゃありませんか?」


ボケっと言乃を見つめていたファントムだったが、突然吹き出して笑いだした。