「不可能だと、思います」


八方手を尽くしたが医学的には、言乃の体に異常はないことが証明されただけ。


『じゃあ、逆らうだけ無駄だ。悩むだけつまんなくなるだけだ。
そんな悩み、捨ててっちまえ』


よっと勢いよくファントムは体を起こした。
その顔は、晴れやかだ。


『人生、楽しい方がいいだろ?』


――私の悩みが、なんて小さいものだったのかと思えるくらいに


ファントムの頭に、パッと豆電球。

『お前さ! そうやって変なプライド持ってるから友達少ないんだろ!』

「そんなことありません!」


なんて失礼なことだろうか。

ファントムの悪ふざけによって、悩んでいた空気を吹き飛ばされ笑えていたことには、その頃まだ気付くことはなかった。


これが変わるきっかけになったのだ、と気付くまで。



ファントムはそれだけ、ある意味での支えだった。