仲が深まるうちに、話す内容も変わっていった。
積年の思いをポツリと言った時、押し止めていたものがどんどんと溢れてしまった。


「私は別に…喋れない訳じゃないんです。なのに、人は私をそういう目でしかみようとしないのが納得いかないんです。

仕方のないことだとは思ってますが、やはり思わずには…いられないんです」


今まで、家族には言えなかった。
自分のことで多く心配をかけているのだ。

こんなこと、秘密という約束で叔父の雅にしか、言ったこともない。


『なるほどねぇ…』


秋が深まり、冷たい風の混ざる夕方。
ファントムは両腕をベンチの背もたれに預け、空を仰ぐ。


『仕方ねーかもしんないけどよ、そりゃ当然じゃねぇ?』

「!」


驚いて、顔をあげた。

雲を見上げているファントムの顔は言乃には見えない。

彼は、とても静かな声で続ける。


『だってよ? コトの思いはどうあれ、お前が障害者であることには変わりない』

「……」


言葉を包まない。
だからこそ、突き刺さる。
だからこそ、真摯に届く。


『お前が今から1、2の3で喋るようになれればいいぜ。そこはどうなんだよ?』