大げさにため息をついて嘆く。


『ったく、ちょっと視えてるからっていい気になるなよな!』

「なってませんよ。そちらこそ、視えてる人がいたからって絡んでこないで下さい」

『んだと!?』


いや待て。相手は子供。
本気になってはいけない。
そうだ。先に挑発したのはオレなんだから、先の特権である大人の空気をかもしだせばいい!


大きな深呼吸をして、そんな気持ちを押し留めようとしているのが端からみて筒抜けである。


百面相が繰り広げられる様を冷静に見つめて言乃は止めの一言。


「…分かりやすい人ですね」

『こんのやろぉっ!』




再びの般若に言乃はクスリと笑った。




こんな付き合いを毎日続けていた。


彼には色んな話を聞いてもらった。

学校の悩み。
話せるのに届かない辛さ。
言葉を使えるのに手話に頼らざるを得ないこと。
高校は普通科を選ぶべきか否か。


いつの間にか、笑顔が溢れてて。
初めて、会話の楽しさ知ったような気がした。

神経を遣わなくていい会話など、滅多にない。