?【あれか。成る程、確かに美しき娘だ。】

ニヤリと笑う男の口からシュルルと長い舌が出ていた。

秋「あの子に手を出す前に儂を倒すことじゃな。」

ジロリと睨む秋雅。その殺気に男は僅かにあてられた。

?【…名を名乗っていなかったな。私は大蛇(オロチ)、これはかの八俣遠呂智の子孫。私の友だ。】

秋「神木陰陽道 現当主 神木 秋雅。あっちで暴れているのは儂の式、猿鶴じゃ。」

秋雅が名乗ると男、大蛇は成る程成る程と笑う。

大【当主、だからその霊圧に殺気か。それなりの実力者とお見受けしていたが…大将が1人で敵に挑むのは少々危険な賭けではないか?】

秋「何がじゃ?」

大【組織というのは頭を叩けば脆い。貴様が死ねば士気は下がるだろうな?】

ククッと忍び笑いする大蛇に秋雅は口角を僅かに上げる。

秋「案ずるな。儂はただの前菜。お主程度ならこの老いぼれで充分じゃろう。それに儂が死んでも翠がおれば貴様らや貴様らの主に負けはせん。まぁ、お主に儂を殺せるかどうかすら怪しいがな。」

そこまで言えば、大蛇の表情は"無"になった。

大【人間風情が、大した自信だな?いいだろう、本来ならば貴様なんぞ相手にしないが今回は特別に私が貴様を葬ってやろう!】

ヒトの肌はたちまち白い鱗に包まれ大蛇の身体がニュッと伸びた。