歩き続けると
次に見えてきたのは大きな真っ黒の城。
天守の方には暗雲がかかっていて見ることが出来ないけれど、相当な大きさがある。


「うぇぇぇん、うぇぇぇん」


何処からか聞こえてくる
小さな子供の泣き声。
周りを見ると、赤い和服を着た五つぐらいの女の子がしゃがみこんで泣いていた。


『早く、あの城にお帰り。
私は一緒には行ってあげられないから
早く生まれ変わっておいで。』

優しく言うと、ゆっくりと顔をあげた。
顔には、火傷の傷があって
見るのも痛々しかった。


『もう、泣かないで?
せっかくの可愛い顔が台無しだ。』


「……うん!!」


ニッコリと笑う女の子の顔から
火傷の傷は消えていて
満面の笑みを浮かべて手を振っていた。


『あんなに小さな魂を使ってまで、私に何かようか?』


少し怒りの籠った少女の声は
静寂の中で響いた。


《いつ気がついた?
我がお主を見ていた事を…。》

突然現れた老人。
いや、この空間の主。


『最初から、いやきっと、もっともっとずっと昔から知っていた。
ずっと探してきた
私以外の感情をもつ存在。』



この空間で探し続けた何か…。



*end*