「あっ…凛ちゃん!」



「…、」




誰もいないと思ったのに、…いた。

私の幼馴染みの、神山水樹。私の、好きなひと。

ふわふわの黒髪を揺らして、その童顔に綺麗な笑みを称えて、こちらに寄ってくる。




「今日も圧勝?」

「…」




いつものように無視をして、水樹の前を通りすぎる。
この後散々愛し合うんだから、これくらい大丈夫。
自分の席につくと鞄を広げ、帰りの支度を始めた。




「凛ちゃん」


「……」



「凛ちゃん」


「…」



「凛ちゃん」




「…」




つくづく、水樹はやさしいなあと思う。

こんな私にも、話しかけてくれて。

最後に喋ったのはいつだったろう。教室で消しゴムを落として、拾ってもらった時にかすれた声で「どうも」と言ったのが最後だ。

でも私に友達はいらない。裏切られる為の友達ごっこなどとうの昔に飽きた。






鞄を持ち上げ、教室を出ようとする、が




ガシリと水樹に腕を捕まれた。

…痛い。





「…離して」



「あっ、やっと喋ってくれた」




顔を綻ばせる水樹。





「やっぱり可愛い声だね」


「…いみふ。」


「くす、可愛い」





しかし腕を握る手は離れていこうとしない。






「っいい加減に…「凛ちゃん」…っ!?」





水樹に抱き締められていた、