さっきまで殴られてたのが嘘のように、あっという間に男たちを倒した龍輝さん。
そして…、私を見て微笑んだ。
……私は、あの時の龍輝さんに恋をした。
名前も何も知らなかったのに、それでも好きになってしまったんだ。
……龍輝さんが同じ学校の先輩だって知った時は「運命だ」だと思ったし、今も「運命だ」と信じてる。
「おーい真由、行くぞー?」
ハッ と気付いた時、周りにはもう誰も居なくて、みんなは数メートル先から私を見ていた。
「早く来いよ、置いてくぞ?」
スッと伸ばされた手。
優しい笑顔に、優しい声…。
…「四聖獣」の龍輝さんには、絶対に近づけない。
そう思っていたけれど。
「もぉ…待ってください!」
だけど私は今、誰よりも近くで誰よりも龍輝さんを感じてる。
「置いてくなんて、言わないでください」
躊躇うことなく差し出された手に自分の手を重ね、そして腕を絡める。
龍輝さんは少しだけ驚いた顔をしたけれど、そのままふっと笑って空を見た。
「…俺、マジで幸せだ」
楽しそうに話して笑ってるみんなには聞こえなかった小さな声。
ううん、隣に居る私だけに放たれた言葉。
「私も、幸せです」
だから私も、微笑みながら同じように小さな声でそう伝えた。