[莉央 side]

今日、凛李愛が風邪で休んだ。

夏風邪ひくなんてバカだな…


「今日中に渡さなきゃいけないプリント…誰か未月さんに届けてくれる人いませんか?」

「先生、私が届けます」

「沢村さん…じゃあ頼んだよ」


沢村 琉生、俺の前の席だから結構前に仲よくなった。

凛李愛を溺愛している沢村。

凛李愛がいない今日、沢村は俺とカナの話に入ってきた。


「あー私の原動力が…」

「凛李愛ちゃんいないとつまんないね〜」

「バカは風邪ひかないって…あれ嘘だな」

「琉生ちゃん、俺らも一緒に凛李愛ちゃん家行く!」

「は?」


"俺らも"ってことは…


「莉央も行こうよ〜凛李愛ちゃん家♪」

「……」


そして放課後、強制的に連れてこられた凛李愛の家。


「ここが凛李愛ちゃん家?」

「うん。この家高校の入学祝いに建ててもらったんだって」

「まじ!?じゃあお父さんとお母さんは一緒に住んでないってこと?」

「そう、凛李愛1人で住んでるの」

「すっげー!」



ピンポーン…



沢村がチャイムを鳴らす。


数分たって、中からパジャマ姿の凛李愛が出てきた。


「凛李愛!」

「凛李愛ちゃん!」

「……」

「えッ!?嘘…琉生に奏汰に…篠宮 莉央まで!?」


俺だけフルネーム…


「あ!!!!」


突然凛李愛が大きな声を出してドアの向こうに隠れた。


「あ、あたし今スッピンだった…」


ドアの向こうから聞こえた声。


はぁ…


「お前、スッピンだと可愛くねぇの?」

「そ、そんなことないもん!」

「じゃあスッピンでも問題ねぇだろ」

「う…」


凛李愛は再びドアから顔を出した。

真っ赤な顔をして。


「み、みんな揃ってどうしたの…?」

「これ、今日中に渡さなきゃって担任が」

「そうなんだ…わ、わざわざありがと」


こいつも素直にお礼とか言えるんだ…

若干感心。


「せっかくだし…あがっていけば?」

「え、いいの!?やったー♪おじゃましまーす」

「あ、おいカナ!」


こいつは遠慮を知らねぇのかよ…


「私たちもせっかくだからお邪魔しようよ、いいよね、凛李愛?」

「えぇ、構わないわよ」

「…はぁ」



「適当に座ってて」


広いリビングにはでかいテレビとソファ、テーブル、その他諸々、全て高そうな家具が並んでいた。

さすが未月財閥の長女…


沢村は何度か来ているのか慣れた様子でソファに座る。

俺とカナは初めて来た場所に落ち着けず、周りを何度か見渡した後、やっとソファに座った。


それから少したって凛李愛が紅茶とケーキを持って戻ってきた。


「病人にこんなことさせてごめんね」

「別に平気よ」