目の前に広がる、観音開きの白い扉。


 その向こうから聞こえてくる、興奮に包まれたざわめき。


 あと15秒です、そう叫ぶ誰かの声が耳に入る。

 15秒後に自分がすべき動きは完璧に頭に入っている。


 いつだって、目の前の扉が開いて、そこを飛び出す瞬間を心待ちにしていた。


 今待機している薄暗い場所とは対象的な、歓声とライトを体中に浴びる光り輝くステージへと。



 でも、今は何も感じない。


―ナニモ、カンジナイ―