(どうしよう…)

頭の中で必死に動き方を考えている葵は隙だらけ。

弥七「悪いな…葵。」

そう言ったかと思うと


先程から振り回していた鎌の先の分銅が

見事に葵の手首に当たり
苦無が飛んだ…。


(負けた…。)

次の瞬間には鋭い鎌の刃が、葵を貫くことだろう

幼い少女達の目の前で…





と 思ったのだが

降ってきたのはなんと
鎌の刃先ではなく、弥七の優しい声だった…。


弥七「俺は…お前を生かすつもりでここに来た。」







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そう。
半年前のこと…。

京華の店だしの日、
弥七は里で会議に召喚されていた。


葵は忍びの仕事を捨て、舞姑の道を選んでいる。それは忍びの里に住む者達にとって 喜ばしいことではなかった。
葵は『忍者』を知りすぎた一般人と同じ…。
抜け忍と同じだと
そう言われたのだ。

だから 里長自らの指示で 葵にもっとも近づける弥七は呼び出され

葵を殺すよう指示を受けた。


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だが 弥七はひそかに秘めた葵への心と 僅かな同情に打ち勝つことが出来なかったのだ…。


だから


上手く計らって、葵たちのことは逃がそう。

そう決めていた。




葵「でも弥七…。それじゃあ…」


弥七「いいんだ。分かってる。俺はお前が生きてさえいてくれたら、それで良い。だから…早く逃げろ。」


平静を装う弥七。
弥七(内に秘めた想いは、決して言うまい…。)


弥七も葵も、
よく理解している


これから互いの身に起こるであろう数々の苦難を

二人を引き裂く未来を





だが



葵「…わかった。弥七、また会おう。それまで生きてて。約束。」


弥七「…さぁな。けど、努力はするさ。お互い健闘を祈ろうぜ。」


葵「…うん。じゃあね。」

弥七「あぁ。またな…。また会おう。」







その後、葵は楓と椿を連れ
ひたすら歩いた。生きるためだけに、歩いていった…。




















--完。