一通り説明が済むと、今度は女将が置屋の中を案内してくれた。

置屋は伝統的な京町屋。

一階は先程記したような間取りで、手洗い場が階段裏にあり、厠は中庭に設けられている。

二階には、狭い部屋が三つ。

沢山の衣裳を並べた着付け部屋と、

この置屋に住んでいる先輩舞妓、及び京華たちの部屋だ。


途中、部屋にいたお姐さん舞妓たちと挨拶もした。

京華の(名前上の)姉で、京華と同じく17歳の舞妓。『京子さん』

この置屋では最年長のしっかり者。19歳。半年前に芸姑になった『春照さん』

春照姐さんの妹で、18歳。舞妓の『小春さん』



京子さん姐さんに至っては 京華と同じ年齢のため、少し違和感があるが

これは京華が中途半端な時期に祇園へやってきたがためで 仕方のないことだ。


年はともかく

祇園では先輩に違いはない。

仕込みの京華にとって、舞妓より上は、皆『お姐さん(おねえさん)』となる。

女将「わてに聞きずらいことで、分からんことやらがある時は、このお姐さん等に尋ねたらえぇさかいな。なんでも聞いたってくれはるさかい。」


京華「はい。おおきにお母さん。」

椿「よろしゅうおたの申します。」




寝る部屋については
先輩姐さんたちがすでに組み換えていた。


今までは、三人で二階の二部屋を使っていたのだが


それを両方三人部屋に…
とすると
ただでさえ狭い部屋が、大変なことになってしまうため

もう一部屋、
客間として使用していた一階の空き部屋(食事場の前)を、寝床として使えるよう、女将に頼んだ。


つまり三部屋を六人で使うことになったのだ。





まず、一階の部屋には椿と芸姑の春照。

二階の一部屋目には 京子と最年少の楓。

もう一部屋には小春と京華が収まった。





《※ちなみに…
吉原でも、甲賀でもそうであるが、置屋にも当然の如く風呂が無い。
これは江戸時代、人々が毎日風呂に入る という習慣を持たなかったためだ。〜以上。筆者のたんなる豆知識でしたf^_^;〜》