「なァ、ななこ。今、恋してるだろ。」

「……………へ?!」

突然な事に、食事中だというのに、箸を転げ落としてしまった。

急にそんなことを言い出したのは、5つ年上の兄である、新垣夏々瀬(アラガキナナセ)。

血筋に外国の血が流れているため、金髪に近い茶髪、いわゆる…栗色?
そんな色の髪型が似合う私のお兄ちゃん。

「こ……?」

「こ?じゃなくて、恋だよ、恋。」

「コイ?鯉?……じゃなくて、恋?」

「そう、恋愛。」

(それは…告白の事、かな?)

してない。
私は、してない。

あくまで浅野君が私に……
こ、こ…コ…恋、を、しているだけで…

私はしていないから、
ここは否定して。

「してない、よ?」

恐る恐る、落としたままの箸をやっと拾い上げて言った。

お兄ちゃんは一瞬、ニヤリと口端を上げた。

「してる顔だよ、ソレは。」

「ど、どんな顔…??」

「こんな顔。」

ニィと眉尻を下げ、逆に口端をグィと上げたお兄ちゃんの表情に、眉を寄せた。

「…私、そんな顔、してる…?かな?」

「してる。」

「えー…!してないよ。」

「こら、夏々瀬。食事中にはしたない。」

「すいません。」

父に注意されると、兄はコツンと頭に拳を当てた。

クイクイと、自分の頬を上げ下げしてみる。

そんな酷い顔、してないと思うんだけど…。