ドキドキドキドキドキドキ......

(き、緊張する~…っ!!)

ぎゅ、と制服の第2ボタンあたりを強く握る。

目の前から段々と近づいてくる人の気配に、
冷や汗が、途轍もない。

「ふぅー…」

深く息をつき、勇気を出して足を踏み出した。

「よ、よぉ!新垣!」

「ん?あ。飯塚くんー。」

ニッコリと優しげな笑顔を向けられ、
また心臓が高鳴る。

立ち去るのが、名残惜しくて
無理やり話題を探す。

ふと、目に留まった、
新垣が抱える大荷物。

さっきから足取りがどこか速かったのは、
早く用を済ませたいからだったのか。

「あ、持つよ。俺。」

「えっ、や、いいよ…!」

ふっ、と背中でそれをかばうようにした新垣。

意地を張っているのでさえ可愛らしく思えた。

「いいから、貸せよ、なっ。」

「でも…」

「ここで通り過ぎたら、俺の男としてのプライドが許さないから。」

「……う、ん…じゃあ、コレお願い。
ありがとう、飯塚君。」

またしても、優しげな笑顔。

俺はこの笑顔が好き。

新垣七虹の、この笑顔に、
惚れているのだ。