『竜!アタシ、大きくなったら、竜のお嫁さんになってあげる。』
『本当か?じゃあ、約束な!
結婚ができる歳になったら、俺が翠を迎えに行くよ。』
『うん!』
懐かしい夢を見た。
あいつと…幼馴染みの翠と俺ーー草津竜(クサツリュウ)ーーが幼いながら交わした、唯一の約束。
覚えているのは、俺だけだと思う。
翠の気持ちは、もうとっくに
他の奴に向いてるだろう。
それでも最近は、幼なじみという立場のおかげで、翠との交友関係は断ち切られる事無く、居られた。
でもこれもいつまで続くか分からない。
翠が俺をどう見てるかも、
どう思っているかも分からないのだから
ずっと変わらない関係でいられる保証はない…。
翠は小学校の頃から男の輪の中に居ることが殆どだった。
だから、その頃は翠を異性として見る感情はなかった。
が……翠が女子と同じようにセーラー服を纏うようになる頃には、俺は翠を女子として見るようになっていた。
中学校に入ってからも俺と一緒に居ることが多い翠が隣にいると、
今まで味わったことのない感情のせいで、心臓が高鳴る。
最初の頃さえ、その感情が何なのかは分からなかったが、
中2の春。
大人びた翠を見て、俺の心臓は今までに無いほどにドキドキした。
上手く笑顔が作れないし、
頬が無意味に熱を持ったのを覚えている。