ピリリリリッ
ピリリリリッ
(……誰だよ、こんな時に。)
家に帰って、しばらく七虹の事を考えていると、
ベッドの端に置いた携帯が光った。
電話だ。
モニターには
「草津竜」の文字。
「竜……?」
「草津竜」とは、アタシの幼馴染で、
家も1軒だけ挟んで隣の、同い年の男子。
竜とはクラスは違うものの、朝は登下校が一緒だから、
ほぼ毎日会っていた。
休日、会わなくても、竜はこうして夜、よく電話をくれる。
「…ハイ?」
『あ、俺だけど…って、どうした、翠。元気ねーな?』
「え…?いや、そんなことない、と思う。」
『はぁ?じゃあそりゃ勘違いだ。元気ねーぞ、お前。』
「………バレたか、こんにゃろう。」
『こんにゃろうとはなんだ。口が悪いぞー、翠チャン。』
「うるさいっ!黙れっ」
なんでも言える、竜。
だからこそ、今、竜とは話したくなかった。
恐ろしいほどの勘と優しさで、
アタシの悩みなんて、一瞬で聞きだされてしまうから、だ。
『…で、何?何があったんだよ?』
「何もない。」
『あったんだろ?分かってんだぞ。ほら、言えよ。』
「何もないって言ってるだろ…」
『……ふーん。』
「……………」
『……………』
「………………………ゴメンナサイ。ありました。」
『ふっ。だろうな。何があった?』
アタシが悩んでいるときはいつも、こんな感じだ。