何ソレ?
何がおかしいの?
そんなの変だ。
七虹は、「嬉しかった」って、
そう言っていた。
浅野の事が好きじゃなくても
そういうことは嬉しい、と。
それなのに、それが嘘。
嘘どころか、自分の利益のため。
そんなの
傷つくのは、七虹じゃないか。
怒りが収まりつかなくなった私は、
別の話題に移ろうとした浅野の前に立ちはだかった。
アタシより背の高い浅野を睨み、見上げる。
浅野は何事かと眉を寄せた。
「最低。浅野、最低だ。
鬼以下だ……!!」
怒鳴りつけて、浅野の胸ぐらをつかむ。
七虹の頬を染めて話す顔が浮かんで、
余計に怒りが奮発した。
「な、なんだよ、急に…。」
「七虹の気持ちはどうなるんだよ!!
あの子、単純だから、きっとすごく嬉しかったはず。それくらい、浅野だってわかるだろ…!」
「翠?落ち着けって。」
周りの男子が、アタシの腕を掴んで浅野から引き離した。
浅野はあたしが急にキレたことに驚いていた。
「それと、地味子って、あぁいう子って、なんだよ…!!
七虹は地味なんかじゃない!
面白くて、単純で、天然で、すっげー良いヤツだ!!
浅野なんかと……全然釣り合わない、可愛い子なんだぞッ!!」
「どうしたんだよ、翠…!!
お前、新垣と仲良かったのか?」
叫んだせいで、顔が真っ赤になったのが、自分でもわかった。
息も、少し荒くなった。
仲良い……わけじゃ、ないけど…
「……知ってる、だけだ…」
「じゃあ関係ないだろ?友達でもないんだから。」
「…………そう、だけど……」
浅野の一言に、腹が立った。
けど、
言い返せなかった。
「友達でもない」
そうだ。
何してるんだろう。アタシ。
七虹とは、友達じゃない。
ただ知ってるだけ。
今言ったことは、あくまでアタシが見た限り。
なのに、
何こんなにムキになってるんだろう?
「…………ごめん。
……同じ女として、腹立っただけ。」
「おー。お前も女心分かるのか。
進歩だな。」
「………ごめん、急に。じゃ。」
バタバタとその場を立ち去った。
悔しい。
あんな奴に告白されても、七虹は喜んでたのに。
友達じゃない、なんて一言で、
何も言い返せなくなるなんて……
悔しくて……
唇をかみしめて、一直線に家へ帰った。