―――彼女のぼんやりとした浮わついた意識の中で終始ごちゃごちゃになった話を抱き締めながら聞いていた彼は話終え寂しげな瞳を持つ愛しいひとに唇を落とす。



「………敬、さん」

「待って、あと10秒だけ」



吸い付くき呼吸さえも支配するそれについ抵抗しようと彼の着るセーターにシワが寄る。しかしすぐに甘ったるく絡み付く指先。



「息…できっ…」

「んー……はい終わり」



ぷはっ、と酸素を求める自然的行為に愛情が沸く。可愛くて可愛くて仕方がない。


わずか数秒ほどの口付けによって再び目に涙を浮かべた彼女は錯乱した思考を振り絞って言葉を発する。



「いきなり、止めてください」

「ごめん可愛すぎて」

「…………」

「ね、コト。こっち向いて」



拗ねたような感情がうかがえる表情を彼に向ける彼女は緩やかに頬を滑る男らしくも綺麗な手に息を飲む。



「嫉妬、してくれたんだ」

「…………」

「不安になった?」

「…………」

「だから目合わせてもくれなかったんだね」

「…………」



無言は肯定とばかりに話を進めそのたびに嬉しさやら喜びが滲み出るような笑みを口元に浮かべる彼。