「好きだからいじめる。そういう性格の奴もいるって覚えておけ」
「そういう性格って……って、え? 好き!?」
ま、待って。あまりにもサラリと言われ過ぎて頭がついていかない。
目を白黒させながら、主任の言葉の続きを待った。
「俺が面倒くさい性格だって、悟れよ。と言っても長瀬じゃ期待できそうもないな」
「そうですよ! 私の頭じゃ理解できません!」
「長瀬の泣きそうな顔とか、すがるような目とか。そのくせめげないところとか……たまらない。本当にイラつく時もあるけどな。それも悪くない」
“たまらない”
そう言った主任の声が妙に色っぽく耳に響いた。
主任が私を好き?
あれだけ毎日怒られているから、絶対にあり得ないことだと思っていた。自分なんか消えてしまえって思われているくらいだと思っていたのに。
それでも想いは消えてくれないから。
気持ちを伝えてスッキリしたら、3年間想い続けていたこの恋を、終わりにしようと思っていた。
それなのに、これじゃ……。
「自覚あるんだよ、愛情表現が歪んでることくらい」
「じ、自覚あるんですか!?」
それなのに止めないなんて。
愛情表現だけじゃなくて性格も歪んでいるのでは……と思いつつも、そんな主任を嫌いになれない自分は、相当変わった趣味をしているのかもしれない。