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「ん……っ」
車が走る音と微かな揺れに目が覚める。頬を撫でるのは温かな外の空気だった。
「あれ、私どうして……っ」
歓迎会で主任の前に座れて、浮かれてたら主任が南さんを好きだということに気付いてしまって。
「やけ酒して……あれ、記憶がない」
「記憶を遡る前に普通は今の状況を確認するだろう」
「え?」
すぐ下から声がして、“条件反射”のように身を竦めた。
「しゅ、主任っ!」
まだボーッとしていたが、一気に目が覚めた。
地面から浮いた足と揺れる視界、そばに感じる温かな体温……私は主任に背負われているのだとやっと理解した。
「目が覚めたか。お前はホント迷惑な奴だな」
「ど、どうして。主任、降ろしてください!」
「降ろしたってロクに歩けないだろ。いいから担がれてろ」
「でもっ」
歩いている場所は食事していた場所から駅へ向かう大通り。車も人通りも多くて、さっきからすれ違う人達にクスクスと笑われている。
仕事以外でも迷惑かけるなんて、本当に自分が情けない。
「耳に響くから黙ってくれないか」
車のヘッドライトが主任の顔をオレンジ色に照らした。
こんなに間近で主任の顔を見えるなんて。
嬉しくて泣いてしまいそうだった。
だけど、主任は……。