いくらトロくてニブい私でも、この状況で気付いてしまった。
南さんを見つめる主任の熱い瞳。……主任は南さんを好きなんだ。対する南さんも主任を見つめ返している。
絡み合う視線が、会話の水面下を現わしている気がした。
「千穂~、飲んでる~?」
「……有希」
御酌に回っていた有希がビール瓶を持ってこちらにやって来た。有希も結構飲んでいるのか、頬が赤らんでいる。
「で、どうなの? 話した?」
有希がチラッと主任を見て、様子を聞いてくる。
「全然……」
私が頭を振ると、有希は「なにやってんのよ~」と眉を寄せた。
なんでと言われても……見てわからないのだろうか。
主任と南さんについて教えてあげようと思ったが、胸の奥から悲しさがこみ上げて来て言葉にならない。
「もう、諦めるって決めたの」
やっと出た言葉はこれだけだった。有希は目を丸くして驚いている。