「しゅ、主任……ビールお注ぎしましょうか?」


主任のグラスが空になっているのを見つけ、ビール瓶を持ちかまえる。

チラリ、と主任が尻目でこちらを見てくれた気がした。

だが。


「すいません。焼酎、芋の湯割りでお願いします」


私の後ろで追加ドリンクのオーダーを聞きに来ていた店員に焼酎を注文しただけだった。

私を見ていたのではない。しかも、軽くスルーされた。

目の前が真っ暗になったようだ。


完全に嫌われている。


いくら打たれ強いとは言え、あからさま過ぎてさすがにヘコむ。

シュンと項垂れて、カクテルをチビリと口にした。


「南さんも結構飲むんだね」

「焼酎や日本酒が好きなんですよ。カクテルはどうも甘くて飲めないですけど」

「僕もカクテルは苦手でね」


私は焼酎も日本酒も飲めない。ビールだって最初の一杯くらいしか飲めなくて、いつもカクテルを頼んでいる。

しかもカクテルもさほど量が飲めず、そろそろウーロン茶でも頼もうかと思っていた。


……やっぱり、私はお子ちゃまだ。


項垂れたまま上目遣いで二人を見ると、ほんのりと頬を染めて楽しそうに笑い合っていた。

胸が痛い。

下唇をキュッと噛んで胸の痛さを紛らさそうとするが、もっと苦しくなるだけだった。


どうして、主任への想いは消えてくれないんだろう。これほど冷たくされているのに。全然嫌いになれそうにない。


……だけど。


「渡部主任、今度一緒に飲みに行きましょうよ。珍しいお酒があるお店知っているので」

「あぁ、楽しみにしてるよ」


……でも。

諦めなくちゃ。