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くじ運と恋愛運は一緒ではないと、改めて実感した。



「南さんは休みの日、何してるの?」

「私は英会話とピラティスに行ってます。今度フラダンスも習おうかなぁ、なんて」

「へぇ、多趣味だね。楽しそうだ」


目の前のテーブルには新鮮なお刺身や、ぷりぷりの海老マヨ和え等、美味しそうな料理がたくさん並んでいる。

だけど、顔をちょっと上げれば見たくも無い光景が目に入ってしまう。


「……」


なんで私が主任に聞きたかったことを、主任が南さんに質問してるのよ。

私はムスッとして頬を膨らませた。こんな顔、主任に見られたら最悪だけど、先ほどから一切こちらを見てこない。



くじ引きで主任の真ん前の席を引き当てた。自分のくじ運がここまでいいと思わなかった。

でも恋愛運は最悪だった。主任の隣に座ったのが南さんだったからだ。


座った時、主任が真ん前にいると嬉しくなったと同時に、主役席に近いと気付いた。

でも、他にも異動してきた人はいるし……と思っていたら、


「渡部主任、隣いいですか?」


南さんの方からやってきた。

主役の人達は上座だったらどこに座ってもいいので自由だった。


主任も南さんのお願いを断るはずもなく。

きっと私が同じセリフを言ったって、「向こうにいっぱい席が空いてるぞ」なんて言われて相手にされないだろう。


それもそうか。

仕事であれほどイライラさせちゃってるもの。だからこの無視されてる状況だって、仕方ないことなんだ。


「……」


だけど、ここでめげちゃいけない。

せっかく主任の前に座れたんだし! 会話ができるチャンスなんだし!