「でもまさか、恋……?」
「……高村さん?」
「ひゃっ、あのっ! こっちの話!」
坂井くんがまた固まってしまった私を心配そうに見てくるので、驚いて変な声が出てしまった。
鼓動は依然としてうるさいくらいに脈打っている。
私が5年ぶりに恋をした? 坂井くんに? ……信じられない。
だって坂井くん、社交性低いから将来不安だし。新入社員なんていつヘコたれるかわかんないし、元彼と同じ職場だし。
7歳も年下だし、あの照れっぷりは絶対まだ童貞。私だって恋を5年休んでたうえに、恋愛の手ほどきできるほど経験積んじゃいないもの。
将来が間近に迫った身としては、彼氏にするには悪条件だ。
「た、高村さん……?」
坂井くんが私を心配そうに見つめてくる。そんな子犬のような目で見られると、胸の奥が締め付けられて……。
「な、なんでもないから」
……苦しい。
でも、
この胸の高鳴りが恋のはじまりなら。
恋が出来ない理由を並べるより……。
「ヨシ!」
動いてみた方がいいのかもしれない。
「高村さん、どう……したんですか?」
遠慮がちな瞳が、気合いの入った私を映し出す。
「坂井くん、私と付き合ってみない?」
【END】