その日の朝、朝霞真はいつものように学校へ向かっていた。
真‥もとい俺は、車窓を見て楽しんでいた。
そんなとき、乗客の人たちが、ある少年のことをじろじろ見ていた。
誰か有名な人なんかな?と思いながら見てみると‥

なんか熱心に走行音録ってる奴(制服が俺と同じ)いるし。

何、あいつ、むちゃくちゃ気が合いそうだな。話しかけてみよっと。
「あの‥鉄道、好きなんですか?」
「うん!大好きだよ!君も好き?」

予想通りの反応だな‥こいつとなら友達になれそうだぞ‥
「もちろん!君、名前は?」
答えてくれないだろうな‥と思いながらきいてみた。
「ああ、俺は立川、立川楓だ。君は?」
答えてくれたんだけど‥どうすればいいんだ?
とりあえず名前きかれたから答えるか。
「俺は朝霞真だ。よろしくな、楓くん。」
会話レベルが「他人」から「友達」に上昇してしまった。何をやっているんだ、俺は‥
まあ、この際向こうがこのノリで「友達」っぽい返答してきたら「友達」ってことでいっか。頼む、「友達」っぽい返答してくれ‥
「ああ、よろしくな、真。あと、俺のことは『楓』でいいよ。」
友達っぽい返答キター!
ってことは、俺ら友達?
マジで、初対面だよね?凄くね、俺。
「ああ、よろしくな。」
俺たちはこの電車で、このドアの前で、
友達になった。
‥とその時、車掌さんが、
「まもなく、所沢、所沢です。新宿線は乗り換えです。」

「「下車駅すぎてんじゃん!」」
まずい、このままだと遅刻するぞ‥
「どうすんだよ、真!」
「イナコーまで戻るぞ、楓!」
その後、急いでイナコーまで戻り、学校へ向かったが遅刻。遅刻届を出さなければいけなくなった。実に面倒くさい。
まあ、隣に友達がいるのだからやるしかない。そう思いながら、俺たちはペンを走らせるのであった。
ちなみに「イナコー」は学校の最寄駅の愛称だ。地元で知らない人はいないらしい‥