いいにおいが鼻をくすぐった。
「ん…?」
「あ、琉おはよー」
キッチンから顔を覗かせた杏が笑顔を見せる。
昨日…杏の横で寝たんだっけ…。
「もうすぐ朝ご飯できるから待っててね」
にこっと笑った杏は再び鍋に顔を向ける。
…よかった、笑ってる。
昨日のことで杏から笑顔が消えたらどうしようかと思ったけど…大丈夫そうだ。
それとも無理をしているかもしれない。
ベッドから起き上がって頭を掻きながらキッチンに入るとより一層上手そうな匂いがする。
「…何作ってんの?」
「この前ね、レシピ本買ったんだ♪ お味噌汁は朝ご飯に良く出るんでしょ? 書いてあったの!」
「…味噌汁…」
杏が本を片手に鍋をかき回している。
…なんだ、こいつ…知らない料理でも本さえあれば作れるんだ。