「…これ、見て……」


 沈黙の後、杏が服を捲った。



「う、わ!! 急に捲るなよ!」



 杏が俺に向けた背中には数えきれない傷跡。





 …杏と初めて会った日に見たものがまだ残ってる。






「…これ…父に付けられたの」

「……」

「17年間毎日のように蹴られて殴られて…本当におかしくなりそうだった」




 いつの間にか泣いてる杏を抱きしめている俺。





 背中を摩ってやるとしゃくり上げて話そうとする。





「無理に話さなくていいから…」

「うう、ん…琉には話して…おきたいの」





 俺の背中に腕を回した杏はまた口を動かす。





「高校なんて行ったの初めてだったし…中学の時は高校生のふりをして毎日バイトしてた…」

「ん…」

「あの人は絶対に私を連れ戻すまで何でもする…」