「んんっ」

見たことのない天井に飛び起きた。
見るところ、ここが保健室だということに気づいた。

「あら、澪ちゃん、起きた?具合はどう?」
「えっ!」
「あら、祐樹君が「こいつ具合悪そうだったのでつれてきましたぁ」っていってつれてきてくれたのよ。そのときには澪ちゃん、もう寝てたからね。」
「そうなんですか…今って何時間目ですか?」
「たぶん…5時間目かな?」
「私、そんなに寝てたんですか?」
「うん。よっぽど疲れてたのね。今日はもう帰ろっか。お母さん呼ぼうか?」
「大丈夫です。1人で帰れます。お世話になりました。」
「気をつけてね、お大事に…」

祐樹にあとでお礼言わなきゃ。
あれだけ寝たからかとても元気でまじめに授業を受けている友達にちょっと悪い気がした。

「ただいま」
家に着き、玄関のドアを開けて、また閉めたくなってしまった。
なぜならそこにいたのは…

「佐々木祐樹。なんでここに…。」
「おぉ。名前覚えてくれたんだ。具合は大丈夫?」
祐樹は自分のキスのせいでこうなったことを知っているからか、意地悪そうににやっと笑った。

「大丈夫。お母さん…祐樹と知り合いなの?」
「ううん、今来たのよ~。澪を心配して来てくれたんですって。」
「え。」

私は今、自分があきれてしまった。
祐樹が心配してくれていたと知ったとたん、胸がきゅんとなったからだ。
どうしよぉう。私ってなんてほれやすいのぉ。

「あ、澪。お父さん今日出張で、ママはちょっと同窓会になちゃったの。」
「えぇ!なんでそんな急に…。」
「んで、その後たぶん友達の家に泊まるから、留守番お願いしてもいい?」
「別にいいよぉ。どうせ同窓会じゃなくて飲みに行くんでしょ?」

ママはきまぐれだから、しょっちゅうこういうことがある。
だからあんまり驚かない。

「あ、お母様。娘さんが心配なら、僕が一緒にお留守番いたしましょうか?」
「えぇぇぇぇ!いやだ、こんなやつと!」
「あら、いいわねぇ…。」

お母さんは祐樹がイケメンだからか、顔を赤くしながら、2人で話を進めてしまっている。

「じゃあ、澪、行ってきまぁ~す!」
「はぁ…行ってらっしゃい。」
「祐樹君、澪のこと頼んだわよぉ~」
「まかせてください!」

何よ。2人して勝手に話進めちゃって…。しかもむちゃくちゃ仲いいし…。


「澪。一晩中2人きりだね。」

そういって祐樹はいつもの意地悪そうな笑みをこぼした。