―――――……
『ッあ、乗ります!!』
エレベーターのドアを閉めようと
していた人に声をかけて待ってもらう。
『ごめんなさい、すいません。』
そう言いながら頭を下げて
車椅子を前に進ませる。
ガタッ
キュッ
エレベーターの中に入り車椅子を
ドア側に向き直し、閉まるのを待つ。
「何階ですか?」
20代後半らしき男が声をかけてきた。
低く通った声で、一瞬ドキッとした。
見た目は割りと渋い系、身長は
180㎝前後といったところかな。
芸能人でいうと、竹野○豊似だ。
よく見るとイケメンだわ…
『ッあ、3階です。』
男はこっちをジーっと見たあと
何も言わずにボタンを押した。
何?私の顔に何かついてる?
変な男……
そう思いつつ男と反対側に顔を背けた。
今、このエレベーターの中は私と
変なこの男の二人きり。
……気まずい。
そう思いこの空気に耐えられず
沈黙を破ったのは私。
『……あのッ、どこかお悪いん
ですか?』
「息子が今日退院で…」
『そうでしたか、おめでとうございます。』
「どうも。」
子持ちだったんだ。
っていうか、我が子の退院なら
もう少し喜べばいいのに…