「俺は、安曇 陵だよ?」

安曇は笑顔で答える。

「……そんなのわかってる。」

「じゃあなに?」

「………もういい。じゃ。」

私は呆れて、教室を後にした。


とは言っても、いく宛は決まっている。

ある人物に会うために、私は屋上へ向かった。



~屋上~

そこには、少し気の弱そうな少女がいた。


「えっ、えっと……なんですか、美月さん?」

「ごめん、久しぶりにあなたの力が必要になったの。」


その少女の顔がぱぁっと明るくなった。


「美月さんの為でしたら、協力します!」

「ありがと。結衣。」

この子の名前を宮瀬 結衣(ミヤセ ユイ)。

今年入学してきた、一年生。

私と同じ、妖血。

妖狐の血を濃く引く、妖力の強い子。


「今回は、どんな依頼ですか?」

「結衣の千里眼の能力で安曇 陵ってヤツについて調べて欲しいの。」

「わかりました。やってみます。……あの、わかってますよね?」


結衣が少し不安そうに尋ねる。

私は苦笑いしながら答える。


「大丈夫。結衣が無防備の間は私が守るから。」


それを聞いた結衣は安心したようだ。


「じゃ、始めますね。」


そう言うと、結衣はその場に座ると目を閉じた。

すると、結衣の頭から狐耳が現れ、千里眼の透視が始まった。