あれ?

そういえば……結衣が見当たらない。

いつも屋上にいるはず……。


「美月。ここにいる子も妖血だよな?」

屋上の隅の方から安曇の声がする。


きっと結衣だ。

そう言えば、結衣は男子恐怖症だったな……。

だから、隅に隠れてたって訳ね。


「ちっ近寄るなぁ~!!」


やっぱり。結衣の声だ。

かなり涙声。


「わっ⁈いきなり鬼火出してきた!」

「安曇、その子に近寄らないで!」


やれやれ。

二人とも世話がやける。


「み、美月さん!だっ誰ですか!この人!」


狐耳までだして、結衣は涙目だ。


「……昨日、透視してもらったヤツ。」

「ど、どうりで妖力を感じると……」


どうやら、少し落ち着いたみたい。

結衣がダメなのって人間の男オンリーなんだよね。

……もし、人間だったら狐耳と鬼火、どう説明するんだろ?

そこまで考えてるのかな。


気付くと、結衣が私をじっと見ている。


「ちゃんと考えてます!バカにしないで下さい!」

「えっ」

「狐って、心読めるんですよ?」


……やば。

結衣って怖い。


「雑談はそこまでだな。」

安曇が、空を見ながら言った。

視線の先には、ブラックホールのようなものが。


「……闇夜が来た。」


安曇がいつになく真剣な顔でその一言を告げた。